[はじめに]

皮膚疾患(皮膚の病気、皮膚病)には、炎症によるもの(アトピー性皮膚炎、乾癬、蕁麻疹、血管炎など)、膠原線維に異常のおきるもの(強皮症、エリテマトーデス、皮膚筋炎など)、皮膚が隆起するもの(皮膚良性腫瘍、皮膚悪性腫瘍など)、水ぶくれができるもの(水疱性疾患など)、あざなどができるもの(母斑、母斑症など)、感染によるもの(細菌感染症、真菌感染症、ウイルス感染症など)、髪が異常になるもの(脱毛症など)など様々なものがあります。最近のバイオテクノロジーの進歩はめざましく、皮膚疾患の病態(病気の仕組み)解明も急速に進んできており、上記の様々な疾患において病態に関与すると思われる物質の候補が多数挙げられてきています。今回私達は、これらの物質が実際に皮膚病患者さんの末梢血(通常の採血で得られる血液)や便・唾液・尿、皮膚組織、臨床写真、超音波検査、ダーモスコピー検査、毛細血管検査による検査データなどと関連しているかどうかについて研究を行いたいと考えています。このような研究を進めるにあたっては、皮膚病患者さんの血液や皮膚組織、便・唾液・尿、臨床写真、超音波検査、ダーモスコピー検査、毛細血管検査を用いた解析が不可欠ですので、皮膚疾患の検査や治療のために通常行われる採血や皮膚切除で得られた検体の一部などを研究用に使わせて頂きたいと思います。

[研究の目的]

採血された血液、あるいは切除された皮膚組織の一部から、様々な細胞や細胞成分、血液中の成分を取り出したり、便・唾液・尿、臨床写真、超音波検査、ダーモスコピー検査、毛細血管検査の結果を用いて、皮膚疾患の病態に関与すると思われる物質がそれらの中に存在するのかどうか、どう関連しているかなどを検討したりし、多数の候補物質に関して研究を進めていき、これらを通じて、皮膚疾患の原因解明や、治療法および診断方法などの開発、さらに医薬品の開発のための研究を行います。

[研究協力の任意性と撤回の自由(同意の表明の前提)]

このお願いはあなたのご病気に対する最善の治療方針にいかなる影響も与えません。また、この申し出を断られたとしても、あなたにとって何ら治療上不利益となることはありません。研究に協力するかどうかは全くの自由で、撤回も可能です。この研究への協力の同意はあなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)の自由意志で決めて下さい。また、同意しなくても不利益になることはありません。

一旦同意した場合でも、不利益を受けることなく、いつでも同意を取り消すことができ、その場合は採取した試料を調べた結果は廃棄され、診療記録などもそれ以降は研究目的に用いられることはありません。但し、同意を取り消した時にすでに研究結果が論文などで公表されていた場合などのように、調べた結果などを廃棄することができない場合があります。

この研究への協力をお願いするため、研究の内容を含め、同意するための手続きについて説明を行います。この説明をよく理解して頂き、「末梢血・皮膚組織における皮膚疾患関連分子の発現に関する研究への同意書」に署名することにより同意の表明をお願い致します。

[研究計画について]

研究題目:末梢血・皮膚組織における皮膚疾患関連分子の発現に関する研究(審査番号 0695-(18))

研究機関名および研究責任者氏名:東京大学医学部附属病院皮膚科 講師 吉崎歩

研究実施期間:研究倫理審査承認後5年間(研究期間:本承認後19年間)

研究方法:通常の採血検査と同じ要領で末梢血を10〜20ml採血し、その一部を本研究用に使わせて頂きます。また、検査および治療目的で病変部皮膚を切除した場合、皮膚の一部を培養(細胞を増やすこと)もしくは凍結して保存し、研究用に使わせて頂きます。提供された検体のなかの細胞や、細胞内あるいは血清(細胞外の液体成分)中の各種物質について研究します。皮膚疾患との関連が想定される物質としては、サイトカイン(細胞から分泌される生理活性物質)、ケモカイン(細胞の動きに関与する物質)、接着分子(細胞の接着に関わる物質)、シグナル伝達分子(細胞内の情報伝達に関与する物質)、増殖因子(細胞の増殖に関わる物質)などがあります。研究ではRNAと蛋白質レベルでの解析が行われます。すなわち、体内の蛋白質は生命の設計図ともいえるDNA(遺伝子)を鋳型として、そこからRNAとして情報が忠実に読み取られ、その情報をもとに蛋白質が作られます。今回の研究では、皮膚疾患との関連が想定される物質が皮膚のなかで本当に作られているのか、あるいは健常人に比べて多量に作られているのかなどを確かめるために、皮膚の細胞や組織を顕微鏡で観察したり、血球から抽出したRNAや蛋白質の中に、研究対象のRNAや蛋白質が含まれているかを調べたりします。また、関連が想定される物質の血清中の蛋白量や活性を測定したりします。便・唾液・尿、臨床写真、超音波検査、ダーモスコピー検査、毛細血管検査の結果なども用います。他の研究参加者の個人情報等の保護や研究の独創性確保に支障がない範囲で、研究参加者が研究計画書及び研究の方法に関する資料を閲覧できるものとします。

本研究の結果があなたに直接有益な情報をもたらす可能性は非常に低いと考えられます。しかし、研究の成果は今後の医学の発展に寄与する可能性があります。その結果、将来、皮膚の病気の診断や予防、治療などがより効果的に行われる可能性があります。

今回の研究では、皮膚の病気の検査や治療のために通常行われる採血や皮膚切除で得られる検体の一部、便・唾液・尿、臨床写真、超音波検査、ダーモスコピー検査、毛細血管検査の結果を利用するだけなので、あなたに新たな侵襲が加わることはありません。また、この研究の参加に同意しない、あるいは同意後に撤回した場合でも、あなたに不利益になることは全くありません。

[個人情報の保護、研究成果の公表]

この研究に関わって収集される試料や情報・データ等は、外部に漏えいすることのないよう、慎重に取り扱います。あなたの人体試料や情報・データ等は、解析する前に氏名・住所・生年月日等の個人情報を削り、代わりに新しく符号をつけ、どなたのものか分からないようにした上で、当研究室において管理責任者が、個人情報管理担当者のみ使用できるパスワードロックをかけたパソコン、鍵のかかるロッカー等で厳重に保管します。ただし、必要な場合には、当研究室においてこの符号を元の氏名等に戻す操作を行い、結果をあなたにお知らせすることもできます。あなたの人体試料や情報・データ等は、必要に応じて共同研究先に送られ解析・保存されますが、送付前に氏名・住所・生年月日等の個人情報を削り、代わりに新しく符号をつけ、どなたのものか分からないようにした上で、当研究室において管理責任者が、個人情報管理担当者のみ使用できるパスワードロックをかけたパソコン、鍵のかかるロッカー等で厳重に保管します。ただし、必要な場合には、当研究室においてこの符号を元の氏名等に戻す操作を行うこともできます。研究の成果は、あなたの氏名等の個人情報が明らかにならないようにした上で、学会発表や学術雑誌及びデータベース等で公表します。結果については、個人的にお問い合わせがあった場合にもお伝えすることができません。

あなたの協力によって得られた研究の成果は、提供者の氏名などが明らかにならないようにした上で、学会発表や学術雑誌上等で公に発表させて頂きたいと思います。

[研究結果の開示]

本研究においては、こちらから解析結果をお教えすることはありません。

[本研究終了後の試料の取扱の方針]

あなたから提供された試料は、原則として本研究のためにのみ使用させて頂きます。しかし、もし、あなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)が同意して下されば、将来の研究のための貴重な資源として、研究終了後も保管させて頂きたいと思います。符号により誰の試料や情報・データ等かが分からないようにした上で、個人情報管理担当者のみ使用できるパスワードロックをかけたパソコン、鍵のかかるロッカー等で厳重に保管します。なお、将来、試料を新たな研究に用いる場合は、改めてその研究計画書を倫理委員会において承認を受けた上で利用します。

[費用負担に関する事項]

ここで行われる研究に必要な費用は、教室の研究費をあて、あなたが負担することはありませんが、通常の診療における自己負担分はご負担いただきます。なお、あなたへの謝金は発生しません。

[研究から生じる知的財産権の帰属]

本研究の結果として特許権などが生じる可能性がありますが、その権利は国、研究機関、民間企業を含む共同研究機関及び研究従事者などに属し、皆様はこの特許権等を持ちません。また、その特許権等に基づき経済的利益が生じる可能性がありますが、これについての権利も持ちません。

[遺伝カウンセリング]

本研究は、子孫に伝えられる遺伝子の情報や個人差を直接解析する研究ではないので、遺伝カウンセリングが必要になることはありません。

[その他]

この研究は、東京大学医学部倫理委員会の承認を受け、東京大学医学部附属病院長の許可を受けて実施するものです。なお、この研究に関する費用は、東京大学大学院医学系研究科・医学部 皮膚科学研究室の運営費から支出されています。この研究に関しては原資の一部に共同研究者からの共同研究費を含みます。本研究に関して、開示すべき利益相反関係はありません。ご意見、ご質問等がございましたら、お気軽に下記までお寄せください。

2018年4月

【問い合わせ先】

東京大学医学部附属病院皮膚科講師 吉崎歩
住所:東京都文京区本郷7-3-1
電話:03-3815-5411

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